商法上の運送契約に関しては、約120年の間、実質的なルールの見直しがされてきませんでした。
平成30年5月に公布され、翌平成31年4月に施行された改正商法では、旅客運送契約及び物品運送契約について、消費者保護の目線も取り入れた見直しが行われています。
旅客運送について
旅客運送契約とは、運送人が相手方(旅客とは限りません。)との間で旅客の運送を約して、相手方が運送費の支払を約する契約です。
商法には、運送人が、運送に関して注意を怠らなかったことを証明しない限り、旅客が運送のために受けた損害を賠償する責任を負うと定められていますが、各運送事業者は、運送人の責任を免除・軽減する特約を定めることが一般でした。
今回の改正で、この運送人の責任の減免を定める特約が、一部の例外を除いて、無効であるとされました。消費者である旅客の利益を保護するための改正です。
例外としては、①運送の遅延を主な原因とする場合、②大規模な火災、震災等が発生し、またはそのおそれがある場合、③運送により通常生じる振動等で生命身体に重大な危険が及ぶおそれがある者の運送の場合が挙げられています。
物品運送について
荷送人は、運送品が危険物であるときは、事前に危険物の安全な運送に必要な情報を通知する義務がある、とされました。通知をしなかったときは、危険物の運送により運送人が損害を被った場合に、損害賠償請求を受けた荷送人の側で帰責事由がなかったことを主張立証する責任を負うことになります。
また、重要な改正として、運送品の損傷や一部滅失についての運送人の責任について、荷受人が異議をとどめないで運送品を受け取ったときは、運送人が引渡の際にその損傷や一部滅失について知っていた場合を除き、運送人の賠償責任は消滅する、とされた点です。
また、運送人の責任が消滅しないときでも、その引渡の日から1年以内に裁判上の請求がなければ責任は消滅する、とされました。
この点、ただし、運送品の損傷や一部滅失が、直ちに発見できないようなものであった場合には、荷受人が、引渡しの日から2週間以内に運送人に対してその旨の通知を発することで、責任の消滅は免れます。
いずれにせよ、運送人にとっては改正により責任が大きく軽減されたことになります。
運送業約款の更新等が完了していない事業者様には、改正を踏まえた更新作業が必要となる可能性があります(参考となる標準約款)。
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2006年弁護士登録以来、企業法務、事業再生・債務整理、税務関係、交通事故、消費者事件、知的財産権関係、家事事件(相続・離婚その他)、
その他一般民事、刑事事件、少年事件に取り組む。講演実績は多数あり、地域経済を安定させる、地域社会をより良くしていくことに繋がる。
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