企業経営と顧問弁護士について
企業経営者にとって、法務面のサポートに顧問弁護士を活用するという選択をする際、どういった弁護士を顧問弁護士として選定するか、という問題とともに、どの程度の費用であれば適正なのか、という問題があります。
顧問弁護士に対し、どの程度のレベルを求めるか、どのような対応を求めるか、ということと費用とは一定の相関関係にあると思われますが、企業規模との関係ではどうでしょうか。
顧問弁護士の費用相場(調査結果)
2009年頃に日本弁護士連合会が調査・公表した資料「中小企業のための弁護士報酬目安」(全国2000人余りの弁護士が回答)によると、次のような回答があります。
●いざというときに優先的にアポイントを取るための契約(別途相談費用発生)、すぐに回答できる相談のみ月額顧問料の範囲内という契約の場合の顧問料は、5万円が45.7%、3万円が40.0%
● 月3時間程度の相談を月額顧問料の範囲とする場合の顧問料は、5万円が52.7%、3万円が33.5%
一方、2021年に株式会社LegalOn Technologiesが実施したアンケート回答(企業経営者・法務担当者300名対象)は、次のような結果となっています。
●月額顧問料の平均金額 51,568円
●割合としては、4~5万円が27%、2~3万円が28%
更に同社の調査結果では、上場企業まで含めた顧問料金の平均は13万円、費用相場は8~10万円とのことです。
顧問弁護士との契約に際して注意すべき事項
同じ月額顧問料でも、法律事務所によって異なるのが、その顧問契約において、どのような内容の顧問業務が提供されるのか、どのような業務について別途の料金がかかるか、といったことです。
多くの企業で、顧問弁護士に対して相談することは、社内外のトラブル相談(役員、従業員含む)や契約書レビューが中心となっています。
中小企業の場合、顧問弁護士に対し、専門性よりも相談しやすさを求める傾向にあり、緊急の相談への対応体制(夜間や土日祝日の対応が可能かどうか)や、連絡方法(弁護士の携帯電話や、LINE・ChatWorkなどのメッセージアプリの利用ができるか)について確認することは重要です。
上場企業などでは、顧問弁護士に対し、社内の法務部門では解決できない内容の業務を依頼する傾向があるため、特定の分野に精通していることや、訴訟等の経験が豊富といった経歴・能力について確認することが重要となります。
また、顧問契約の範囲を超える業務として別途の弁護士費用が発生する可能性がある場合に、どのように弁護士費用を計算するのか、ということについても、事前に確認をする必要があります。
もちろん、事前に想定されなかったような事案について依頼をする場合には、その時点で改めて費用について協議が必要となる場合もあるでしょうから、想定される顧問業務外の依頼を明確にした上で、確認するべきでしょう。
個人事業主の場合の顧問料相場は?
法人化していない個人事業主の場合、事業規模がそれほど大きくないことが多いため、一般的には中小企業の顧問料よりも低くなる傾向にあり、月額3万円程度が相当だと思われます。
しかし、個人事業でも、多くの従業員を雇用していたり、積極的な業務展開をしているために契約書レビューやトラブル対応が頻繁に必要となるようであれば、顧問料は月額5万円以上でも相当といえる場合があるでしょう。
高額な顧問料の場合に弁護士に求めるものとは
企業によっては、月額10万円以上など高額な顧問料で顧問弁護士との契約をするケースも多々あります。その場合、顧問弁護士が提供するものとしては、例えば、次のようなサービスがあります。
●夜間・土日祝日でも弁護士に直接相談対応
●特定の分野(例えば、国際案件、特許など知的財産権など)に精通した弁護士による対応
●経営会議やコンプライアンス委員会に出席するなど定期的に企業訪問
●新たに交わす全ての契約書についてレビュー
●支払いを遅延する顧客に対する請求書を代理人として発送
企業法務を専門としている弁護士には、顧問先企業の仕事以外は引き受けないというスタンスの弁護士もいます。また、著名な弁護士の中には、紹介がなければ業務を引き受けないというスタンスの方もおり、顧問契約により、何かあったら信頼できる弁護士に依頼ができる体制を作ることは、予防法務の観点からは重要と思われます。
顧問料と別途発生する費用について
顧問弁護士に業務を依頼した場合に、顧問料とは別途、弁護士費用が発生することがあります。
一つは、代理人として事件を委任する場合です。例えば、訴訟案件を委任するときは、顧問契約とは別に委任契約書を締結し、着手金・報酬金を請求することができるという形にしたり、あるいはその案件の処理に要した時間に応じてタイムチャージ(時間制報酬)を請求する、ということがあります。
また、顧問契約上、月に一定の時間までを顧問業務として行うという契約になっている場合には、その時間を超えて業務を行った場合に、タイムチャージで追加費用を請求することができるという形になっていることもあります。
いずれの場合でも、顧問契約をせずに計算される弁護士費用に比べて、顧問契約をしていることで割引をされるという形にしている法律事務所が多々見受けられます。
顧問契約について協議を行うときは
以上、顧問料についての相場と顧問料に含まれる業務内容などについて解説をしました。現実には法律事務所の規模やレベル、地域などによって、その基準には大きな差があります。
また、法律事務所によっては、顧問料について交渉することが有効な場合もあると思います。例えば、事業規模が大きく、毎月一定数の契約書レビューは発生するが、緊急対応や事件対応時の弁護士費用の割引は必要ないので、月額顧問料を値引きしてほしい、といった交渉が想定されます。
弁護士の立場でも、数十社の顧問先企業と契約をしていると対応にそれなりの時間が必要となるため、新たな顧問先候補の企業からのリクエストがあっても、全ては受け入れられないということもあり得ます。
顧問契約を検討されるときは、どのような対応を求めるかということと費用のバランスを考えてご検討いただくと、顧問弁護士との最適な関係を築くことができると思います。
当事務所も、中小企業から大企業まで多くの企業の顧問弁護士として契約をさせていただいていますので、顧問契約をご検討の際は、ぜひお気軽にお声がけください。
2006年弁護士登録以来、企業法務、事業再生・債務整理、税務関係、交通事故、消費者事件、知的財産権関係、家事事件(相続・離婚その他)、
その他一般民事、刑事事件、少年事件に取り組む。講演実績は多数あり、地域経済を安定させる、地域社会をより良くしていくことに繋がる。
こう確信して、一つ一つの案件に取り組んでいます。
※日本全国からのご相談に対応しております。