内容証明郵便を出すべき場合とは?書き方・利用方法を解説

1 内容証明郵便とは何か?

内容証明郵便とは、文書の郵送方法の一つで、郵送した文書の内容、発送した日付について、後日、郵便局に証明を求めることができるサービスです。配達証明付きとすることで、文書受取りの日付も証明されます。

郵送する時点で、将来的に訴訟で証拠として提出することが見込まれる場合や、受け取った相手に対して、提訴の可能性が高いと心理的にプレッシャーを与えるために利用されます。

一方で、誤った利用の仕方をすると、発送した方にとって不利なものとなるおそれもあるため、どのような場面で出すべきなのか、出すときはどのように記載したらよいか、といったことを正しく把握しておくべきです。

内容証明郵便を利用する主なケースとしては以下のようなものがあります。

ケース1:契約解除を通知する場合
ケース2:未払代金の支払いを督促する場合
ケース3:債権者が消滅時効の完成を猶予させ、債務者が債権の消滅時効を援用する場合
ケース4:損害賠償を請求する場合

そのほかにも、様々な違法行為(知的財産権の侵害行為など)に対して警告文を送る場合や、インターネット上に掲載された誹謗中傷記事の削除を求める場合などにも、内容証明郵便が利用されることがあります。

2 内容証明郵便の法的効力・意味

では、上記のようなケースについて、内容証明郵便を利用することが法的にどのような意味を有するか、解説します。

ケース1:契約解除を通知する場合

契約解除する場合に内容証明郵便を送る意味合いは、法律または契約に従った手続により、契約が有効に解除されたことを後日証明することができるということに尽きます。

例えば、代金の支払いをしてこない相手との間で契約を解除するためには、契約上、相手方に対して相当な期間を定めて催告することが求められているケースがあります。その場合、解除をする前に、相当な期間として、例えば1週間以内に代金を支払え、と要求する文書を送らなければ、後日、「相当な期間を定めて催告をした」ことが証明できない可能性があります。

つまり、「催告」をして、その後に「解除」をした。こういう手順を踏んだこと、その文書が相手に届いていることを示すために、内容証明を利用することになります。解除を前提とした請求をする側が、そういった事実の立証をする責任を負うこととなっているためです。

「催告」や「解除」を普通郵便だけで行ったとすると、相手が「そんな書類は届いていない」と言い始めたときに、証明する手段がなくて困ることになります。そこで、「催告」や「解除」の通知を内容証明郵便で行うのです。

ケース2:未払代金の支払いを督促する場合

請求書を送った相手方から代金の支払がない場合に支払を督促する際も、場合によっては内容証明郵便が利用されます。

内容証明郵便にすることで、債務者には、(もし設定された期日までに支払わないと、訴訟を提起されてしまうかもしれない)という心理的なプレッシャーが加わることになり、普通郵便で請求書を送るよりも早期に支配が受けられる可能性があります。

つまり、内容証明郵便を相手に対して支払いを督促する場面で利用する際に、請求に応じない場合には「法的な措置をとる」という意思を明確に示すことにより債務者に対して支払いをせざるを得ない状況と感じさせる効果があります。

ケース3:消滅時効の完成猶予や援用をする場合

債権を有する場合でも、未払いが続き、請求できる時点から3年が経過すると、その債権について消滅時効が完成してしまい、相手方からの「時効を援用する」という通知によって、債権は消滅してしまいます。

債権者側には、そのような結果とならないようにするため、時効の完成を猶予させる方法がいくつか民法上に規定されていますが、訴訟提起などに間に合わないような場合には、催告によって6か月に限り時効の完成を猶予する効力が認められています。

そこで、時効完成前に催告をしたことを後日の訴訟において立証するために、この場合の催告は内容証明によって行われることになります。

また、債務者側にとって債権の消滅時効が完成した場合、その時効を援用する必要がありますが、これについても、時効が完成した時期に間違いなく債権について時効援用をしたことを立証する手段として、内容証明郵便が用いられることになります。

ケース4:損害賠償を請求する場合

例えば、商標権や特許権といった知的財産権を侵害している第三者や、交通事故の加害者側など、損害賠償請求の対象となる相手に対して損害賠償を請求する場合にも、内容証明郵便が利用されます。

その理由は、先にもあったように「債務者に心理的なプレッシャーを与える」ということもあります。また、契約違反(債務不履行)の場合には、遅延損害金を計算するための起算日が明確になる、という意味合いもあり、内容証明郵便を利用するべきだと考えられます。

以上のようなケースを踏まえると、内容証明郵便の利用をするべきケースは、次のようにまとめられます。

(1)法律上・契約上の手続が取られたことを証明するため
(2)任意に支払おうとしない相手に心理的プレッシャーを加えるため
(3)将来、訴訟を提起して請求するための準備

このような効力を目的に内容証明郵便が利用されることをおさえておきましょう。

3 内容証明郵便の様式

内容証明郵便の送り方には、内容証明郵便を取り扱っている郵便局(どこでも対応してくれるわけではありません。)に発送しようとする文書を持参する方法と、インターネット上のウェブサイトに電子データをアップロードし、それを文書として郵便局から郵送してもらう方法の二通りがあります。

前者の方法だと、1行の文字数と1列の文字数に制限があり、縦書き・横書きのいずれでも、「1行20字以内、1枚26行以内であること」が必要となります。
また、郵便局に行くときは、同じ内容の文書を3部持参し、自社の社名(個人名)の横に押印すること、2ページ以上になるときは、ホッチキスでとめて割印をすること、封筒に相手の住所、氏名または社名と自社の住所、社名を記載することなどが求められます。

一方、後者のいわゆる「e内容証明」の方法だと、文字数制限はありません。文書の枚数が5枚までとなっていることや、文字のフォントが10.5以上とすることなどの制限はありますが、紙で持っていくのと比べると、遥かに便利ですので、こちらの方法も検討に値します。
ただ、この方法だと押印などがないため、人によっては、前者の形式(押印・割印がある書面)の方が心理的プレッシャーを与えるには適していると考える向きもありそうです。

4 内容証明郵便に記載するべきこと

内容証明郵便に記載するべきこととしては次のような項目があります。

(1)文書の表題
(2)通知内容
(3)日付
(4)相手方の住所、氏名(相手方が法人の場合は住所、社名、代表取締役名)
(5)自社の住所、社名、代表取締役名

この中で重要なのは、当然、(2)の通知内容です。上記のように法的な意味合いを期待して発送する以上は、請求する根拠や権利、金額等を誤ってしまうと、場合によっては致命的(後日、裁判で自らの主張が通らなくなる、あるいは証拠として提出する意味がなくなる。)です。

5 弁護士に依頼するべきかどうか

では、内容証明郵便を弁護士に依頼するべきかどうか、という点については、どのように考えればよいでしょうか。依頼するメリットとデメリットを整理してみます。

【弁護士に依頼するメリット】

① 法律上・契約上、必要とされる手続を正しく理解して作成できる
 適切な法律条項や契約条項を引用し、その条項に記載された内容を満たす形での文書作成ができます。

② 弁護士名義で送付した場合、より心理的プレッシャーを加えることができる
 弁護士が代理人として就いているということを示すことによって、当事者が本気で訴訟まで戦う気でいるということが伝わります。訴訟に応じる手間や費用を回避したい、という動機で、支払いをしてくる可能性が高まります。

③ 内容証明郵便を受領した相手方からの連絡窓口を弁護士とすることができる(弁護士との委任契約の内容によります。)
 内容証明郵便の最後に、「以後、本件に関する対応の一切は代理人である○○弁護士がお受けするので、当事者に連絡をすることは厳に控えるようお願いします」といった文章を記載し、その後の対応を弁護士に任せることができます。

【弁護士に依頼するデメリット】

① 弁護士費用がかかる
 但し、通常の訴訟依頼などに比べると、比較的安価に対応を委ねることができます。

② 当事者間の人間関係に回復困難な亀裂が入る可能性がある
 支払いをしない、といったトラブルが発生しているとはいえ、当事者間の話合いで支払いが行われれば、人間同士の信頼関係は回復する可能性は十分にがあります。しかし、一方が弁護士を代理人としてしまうと、そのことで相手も代理人を就けることになり、以後、信頼関係が回復することは困難となります。但し、そのようなデメリットを避けるために、依頼を受けた弁護士名を出さずに書面を作成することは可能です。その場合、内容証明郵便を出した後の対応は、当事者ご自身にしていただくことになります。

6 内容証明郵便を弁護士に依頼する場合の費用(本江法律事務所の場合)

(1)通常の弁護士費用

内容証明郵便を本人名義で出す場合  5万5000円~

内容証明郵便を弁護士名義で出す場合 11万円~

但し、2通以上の内容証明郵便を弁護士名義で提出する場合、本江法律事務所では、基本的に交渉事件として委任契約をすることとしています。

(2)顧問契約をしている場合

顧問契約をしている企業様が本江法律事務所に内容証明郵便を依頼される場合には、本人名義にするか代理人弁護士名義にするかを問わず、顧問契約において対応するべき業務としてこれを作成することになります。

いずれにせよ、内容証明郵便の発出を検討されている方は、一度は弁護士にご相談いただいた方が間違いのない文書発出が可能となります。お気軽にご相談ください。

Website | + posts

2006年弁護士登録以来、企業法務、事業再生・債務整理、税務関係、交通事故、消費者事件、知的財産権関係、家事事件(相続・離婚その他)、
その他一般民事、刑事事件、少年事件に取り組む。講演実績は多数あり、地域経済を安定させる、地域社会をより良くしていくことに繋がる。
こう確信して、一つ一つの案件に取り組んでいます。

※日本全国からのご相談に対応しております。

取扱分野
福岡市の顧問弁護士相談
解決事例
お客様の声

お気軽にお問合せ、ご相談ください。 お気軽にお問合せ、ご相談ください。 メールでのご相談はこちら