介護現場で事故が発生した場合の対処
介護現場では、施設内外で、利用者の転倒や誤嚥等の事故が起こることがあります。
その場合、事故の結果が重大なものであったり、介護施設や職員の対応があまりよくなかったり、あるいは、ご家族の不満・憤りが収まらない、といった理由で、法的なトラブルにまで発展してしまう、ということがあります。
そんなときに、介護職員の方が責任を追及されると、どうしたらよいか分からない、となるのが普通です。
この記事では、そういった立場になった方がどう対処すればよいか、ということについて解説します。
民事責任と刑事責任
まず、介護職員として追及される可能性がある法的な責任には、大別して民事責任と刑事責任があります。
民事責任は、損害賠償として金銭を支払え、という被害者本人や家族から介護職員個人への金銭請求という形になります。
多くのケースで、介護施設も請求の対象になります。
一方、刑事責任は、刑法などで定められた犯罪を犯したことに対する責任追及で、「被疑者」「被告人」という立場になります。民事責任の場合に「被告」と呼ばれることとは、区別されます。
犯罪に対して刑罰を課すことができるかが問題となりますが、その責任を追及する主体は検察官及び警察官(捜査機関)となります。
要するに、民事責任の追及と刑事責任の追及では、目的が異なり、どちらも並行して手続が進むこともあります。
刑事責任の場合はどうなるか
刑事責任が追及されるケースというのは、介護事故と言っても、職員の職務遂行の仕方が余りに杜撰だったり悪質で、被害の結果も重いものが多いと思われます。
裁判例では、特別養護老人ホームのおやつの時間に、間違って、ゼリーでなくドーナツを配ってしまった准看護師が、業務上過失致死罪に問われたケースがあります。
第一審(地裁)で罰金刑の有罪判決を受けたものの、第二審(高裁)では逆転無罪となり、判決が確定しました。
このように裁判所(審級)によって結論が異なることも少なくありません。
よく報道されるのは、利用者への暴力などの虐待事件で、介護職員が逮捕されたり、起訴されるケースです。報道されると、一般市民からは、そのような事実があったかのように受け取られてしまうことが多いですが、犯罪を犯したことが事実であるかどうか、介護職員自身から聞き取って対応することが必要です。
介護施設としての責任も追及されかねないところですので、場合によっては、介護施設の費用負担で私選弁護人を選任して、当事者から詳細を聞き取り、共有する、ということが必要となります。
民事責任を追及された場合は
一方、介護職員の方が損害賠償等を請求されたり、提訴された場合、自分で負担しなければならないのではないかと不安になるかもしれません。
しかし、民事上の損害賠償責任は、多くの場合、介護施設が加入する損害保険でカバーされますので、民事責任の追及があったときは、まず、損害保険でカバーされるケースかどうかを確認する必要があります。
通常は、介護職員と同時に介護施設も訴えられるため、対応は介護施設の依頼を受けた弁護士が行ってくれます。
最終的に原告の請求が認められて、賠償命令が出ても、保険金で支払ってもらえるので、介護職員個人で対応する必要は通常はありません。
介護職員としては、介護施設側が立てた弁護士の弁護活動に、協力していくことは必要となりますので、そういった点では大変な思いもするでしょうが、介護事故の経緯などについて説明して、その責任を果たしていくことが重要です。
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2006年弁護士登録以来、企業法務、事業再生・債務整理、税務関係、交通事故、消費者事件、知的財産権関係、家事事件(相続・離婚その他)、
その他一般民事、刑事事件、少年事件に取り組む。講演実績は多数あり、地域経済を安定させる、地域社会をより良くしていくことに繋がる。
こう確信して、一つ一つの案件に取り組んでいます。
※日本全国からのご相談に対応しております。