従業員の問題行動と炎上騒動に巻き込まれることのデメリット
昨今、『バイトテロ』という言葉も登場し、従業員による問題行動がSNS上で拡散され、炎上することで、企業価値が毀損される事案が散見されます。
多くの従業員が所属する小売業や運送業などの企業においては、短期間のアルバイトも雇用しなければならない現状もあり、事前に研修などを行うなどの対策を取っても、従業員によるSNS投稿が問題となることは、防げないこともままあります。
そこで、ここでは従業員の不適切投稿が問題となった場合の対処法について、解説します。
不適切投稿が問題となった場合の対応
(1)内部調査の実施
問題となった投稿内容を特定し、誰が投稿したか、動画などの場合には映り込んだ人物の特定などを行います。
また、特定の情報を投稿したのであれば、その情報が事実かどうか、情報源などについて確認します。調査対象は、関連する従業員や部署ということになり、客観的な資料を確保するようにします。
(2)公的な謝罪や説明
会社としては、投稿が社会的に大きな反響を呼び、企業の信用に影響を与えるおそれが大きい時は、公式ウェブサイトやプレスリリースを通じて謝罪文を発表し、再発防止策を示します。
(3)従業員への懲戒処分
不適切な投稿が、企業内の規則や社会的倫理に反する場合、あるいは、法令等に反する問題を含むような場合には、従業員に対し、就業規則に基づく懲戒処分を検討します。
厳重注意、減給、停職、解雇などの適切な処分を検討する。
(4)SNS利用に関する社内規定の策定・見直し
社内にSNS利用に関する規定がない時はこれを策定する必要がありますし、規定があっても不十分である場合や、従業員の理解が不足している場合には、その規定を整備し、周知するための教育研修を実施する必要があります。
(5)再発防止策の策定と実施
不適切な投稿が再び行われるリスクがある場合には、関連する問題を含めた従業員教育の強化やモニタリング体制の構築の必要があります。
SNSで実際に起こった従業員の不適切投稿とその後の対応
(事例1)「Y運輸」の従業員による荷物の乱暴な取り扱い
概要: 2017年、宅配大手「Y運輸」の従業員が、荷物を乱暴に投げつけたり、暴言を吐く様子を撮影した動画がSNS上で拡散されました。
企業の対応: 当初、企業の対応が遅れ、正式な謝罪や原因究明、再発防止策の提示が十分に行われませんでした。
社会的評価: 対応の不十分さが批判され、顧客からの信頼を失う結果となりました。これにより、企業イメージの悪化や業績への悪影響が生じました。
(事例2)「H寿司」の従業員による不適切動画の投稿
概要: 2019年、回転寿司チェーン「H寿司」の従業員が、厨房内で魚を手づかみで食べる様子を撮影し、SNSに投稿しました。
企業の対応: 当該従業員を解雇し、公式サイトで謝罪文を掲載。再発防止策として従業員教育の強化を発表しました。
社会的評価: 迅速な対応については評価されましたが、一方で業界全体への不信感が生じました。
(事例3)コンビニエンスストアの従業員による不適切動画の投稿
概要: 2019年、コンビニエンスストアの従業員が、アイスクリームを直接口に含んで吐き出す動画をSNSに投稿しました。
企業の対応: 当該従業員を解雇し、公式に謝罪文を発表。再発防止策として従業員教育を強化しました。
社会的評価: 対応の遅れが指摘され、ブランドイメージの低下や売上への影響が懸念されました。
まとめ
これらの事例では、企業の対応が遅れたり不十分であったことにより、社会からの批判が強まり、結果として企業損失が拡大しました。
具体的な問題点としては以下の点が挙げられます。
① 対応の遅れ
問題発覚後、迅速に公式な謝罪が行われなかった。
→ 問題が発覚した時は、速やかに事実関係を把握した上で公式な謝罪を行う必要があります
② 情報開示の不十分さ
事実関係について、十分な情報が開示されなかった。
→ プライバシーに配慮しつつも、情報を可能な限り開示することで、誠意ある対応をしているという印象を与えることができます。
③ 再発防止策の欠如
→ 具体的な再発防止策を提示し、実行することによって、社会からの信頼を取り戻すことにつながります。
いずれにしても、具体的な対応に際しては、法律の専門家にご相談いただくことで、法的な問題点を漏らすことなく対応が可能となります。
当事務所においても、従業員による不適切なSNS投稿についてのご相談をお受けしていますので、お気軽にご相談ください。
2006年弁護士登録以来、企業法務、事業再生・債務整理、税務関係、交通事故、消費者事件、知的財産権関係、家事事件(相続・離婚その他)、
その他一般民事、刑事事件、少年事件に取り組む。講演実績は多数あり、地域経済を安定させる、地域社会をより良くしていくことに繋がる。
こう確信して、一つ一つの案件に取り組んでいます。
※日本全国からのご相談に対応しております。