介護施設でのハラスメント対策の重要性
介護施設は、職員と利用者とが常に一つ屋根の下で生活を営み、しかも利用者自身が高齢化し、疾患等を抱えている他、契約当事者として利用者の家族も強い利害関係を持っているという点で、他の業種と比べて、その職員にとって、非常に特殊な職場環境を形成しています。
そのため、職員や利用者に対するハラスメントの問題が起きやすく、職員に対するハラスメントは、介護施設を運営する企業にとって、従業員の離職や精神疾患等を招きかねないという側面があります。
一方、利用者に対するハラスメントは、企業としての信用問題に容易に発展してしまうことから、企業存続にとって死活問題ともなります。
そのため、厚生労働省においても、「介護現場におけるハラスメント対策」として、啓発ページが設けられています。
介護施設でのハラスメント対応
~施設・事業所が取り組むべきこと
①事業者としての基本方針の決定と周知
ハラスメント防止規程や基本方針といった文書を作成し、それを周知することが第一歩です。
作成した規程や基本方針は、職員や利用者、その家族が見ることができるように備え置きます。
利用者や家族には、契約時にこれを確認してもらうようにすることが重要です。
②マニュアル等を作成・共有すること
ハラスメントの予防や発生時の対応などについて、責任者の明示や窓口の設置と合わせて、マニュアル等を作成します。作成したマニュアルは、職員に定期的な研修を行うなどして、現実に発生した場合に実行できるように周知徹底をします。
研修は、トップダウンで講義するだけでなく、職員の経験を共有する場として、ワークなどを取り入れた形で進めるのが有効です。
ハラスメントに対する意識向上を図ることは、職員同士のコミュニケーションを改善することにもつながり、働きやすい労働環境にもつながる、という目線が必要です。
③相談しやすい職場環境づくり
ハラスメントを含むトラブルやリスクについて、職員が管理者や専門家に相談しやすい体制を作ることが必要です。
例えば、相談窓口を設置し、職員に周知することが必要です。
④契約内容の理解による対応の統一
職員が利用者などからのハラスメントを受けても、なかなか相談できず、耐えなければならないと思ってしまうケースが多数報告されています。これは、職員の高い倫理観などから、利用者からの暴言等に耐えることも自分たちの仕事のうち、といった誤った認識を持ってしまっていることに起因していると考えられます。
改めて利用者との入居契約書等の契約内容を確認し、そのサービスの具体的な内容について、介護現場の全員が認識を共通にすることで、早い対応を取ることが可能になります。
⑤利用者・家族等に対する周知
職員へのハラスメントの予防や介護サービスの円滑化のため、重要事項説明書や契約書で、ハラスメントが行われた場合の対応の仕方や契約が解除となる可能性を伝えておくことが必要です。
⑥利用者や家族等に関する情報収集とそれを踏まえた職員配置
ケアマネージャーや他の利用施設等を通し、あるいは施設でのアセスメントにより、利用者・家族等の情報を収集し、ハラスメント発生の予防に繋げます。訪問系のサービスでは、避難経路の事前把握など、特に重要な対策となります。
⑦対策等をPDCAサイクルで更新していくこと
一旦、ハラスメント防止・対応の体制を構築しても、その体制が機能しているかを定期的に、あるいはハラスメント発生後において振り返ることが重要です。マニュアルについても、改善すべき点は改善していくことで、再発防止等につながります。
ケーススタディと専門家としての弁護士の助言の有用性
以上のように、基本方針・規程やマニュアルの作成をして、契約書を理解したとしても、実際に起こる事象の多くは、予期しなかった部分があり、それぞれ個性があるものです。日頃から利用者対応で目まぐるしく動いている現場の職員や責任者では、急な対応には不安があると思います。
そこで、研修などの機会を設けて、ケーススタディに取り組んでいただくことが重要です。つまり、シミュレーションとして、初めての事案でどう行動するか、ということを考えてもらうことで、実際に起こった事案でも、ケースバイケースで考えて動けるようになるのではないかと期待できます。
更に一歩進んで、ハラスメント発生時に必要となる事実確認から、その後の利用者・職員対応といったアクションまで、その全部または一部を、弁護士に相談する、ということは、決定的に重要だろうと思います。
事実確認の際に必要となるエビデンス【証拠】のピックアップの仕方、保存の仕方、当事者への事情聴取のノウハウなど、いずれも法的な紛争となった場合を想定して行われます。
それ以上に、ただでさえ介護サービスの提供に日頃から忙殺されている職員が、ハラスメント対応というイレギュラーな業務から解放されることになり、職員にとっては渡りに船といったところだと思います。
当事務所は、福岡・天神を拠点として、介護施設を運営する企業様にも、迅速・的確な対応を行うことができます。最初は、職員向けの研修だけでも、ご相談があれば土日問わず対応させていただきます。
2006年弁護士登録以来、企業法務、事業再生・債務整理、税務関係、交通事故、消費者事件、知的財産権関係、家事事件(相続・離婚その他)、
その他一般民事、刑事事件、少年事件に取り組む。講演実績は多数あり、地域経済を安定させる、地域社会をより良くしていくことに繋がる。
こう確信して、一つ一つの案件に取り組んでいます。
※日本全国からのご相談に対応しております。