退職勧奨とは?
一般的には、会社が特定の従業員に退職をするように促すことを、「退職勧奨」といいます。
この退職勧奨は、あくまで従業員本人が自分の意思で退職を促すだけですので、基本的には会社が自由に行うことができます。
ただし、労働者の任意の意思を尊重する態様で行うことが必要です。
退職を強要することは、会社に対する損害賠償請求の理由となったり、退職自体が取り消されたりする可能性があります。
退職勧奨が違法になる場合
退職強制として違法だと言われてしまう場合として、どのようなケースがあるでしょうか。
典型的なのは、退職をするかどうかを労働者の自由意思に任せず、実質的に強制した、と言われてしまうケースです。どのような言動であれば強制と言われるかは、ケースバイケースですが、次のような裁判例の判断基準が参考になります。
「労働者が自発的な退職意思を形成するために社会通念上相当と認められる程度をこえて、当該労働者に対して不当な心理的威迫を加えたりその名誉感情を不当に害する言辞を用いたりする退職勧奨は不法行為となる」
退職が取り消される場合
民法上、重大な事実について勘違いした状態での契約等は、錯誤として取り消される可能性があります(民法95条)。
退職勧奨の場合には、会社と従業員との間に退職合意という契約が成立していると見ることができます。
例えば、「退職届を出さない場合には解雇になりますよ」と告げて退職勧奨をした場合で、従業員がこれに応じたとしても、後から本当は解雇ができる理由がなかったということになれば、退職は取り消されてしまう可能性があります。
裁判例でも、労働者に解雇されるべき理由が存しないにも関わらず、労働者が解雇されるものと誤信してこれを動機として退職の意思表示をし、その動機が明示又は黙示に表示され、かつ、客観的にみてその錯誤がなければ退職の意思表示をしなかったであろうといえる場合には、退職の意思表示は錯誤により無効となる、と判示した事案があります。
解雇になる可能性を示唆することで常に取り消されることになるわけではありませんが、誤信したという形にならないよう、十分に解雇事由の有無も検証して退職勧奨に臨む必要があります。
退職勧奨までの具体的な流れとは?
あくまで一例ですが、次のように進めましょう、とアドバイスすることがあります。
【実施の回数・時間・場所】
まずは、面談をすることになります。
面談を何回するかはともかく、面談時間を30分~1時間で終えること、かつ、毎回、テーマを変えることで、執拗に面談を重ねた、と言われないようにしましょう。
また、勤務時間外では面談は行わない、場所はプライバシーに配慮して選定することが必要です。
【説得のしかた】
従業員のこれまでの功労についても言及し、その人格否定を行わないように説得することがポイントです。
退職しなければ不利益を被る、という示唆は、場合によっては強制と捉えられるため、本当に不利益があるから注意をしてほしい、覚悟をしてほしい、という助言として捉えられるように注意します。
【条件提示】
退職金の増額などの一時金を支払うことについては、最初から提示することは控えた方が賢明な場合もあります。
最初から提示をすると、2回目以降の面談が事実上の金銭交渉になってしまう可能性があります。
とはいえ、金銭の提示自体が問題、ということはないため、有効な選択肢として検討するべきです。
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2006年弁護士登録以来、企業法務、事業再生・債務整理、税務関係、交通事故、消費者事件、知的財産権関係、家事事件(相続・離婚その他)、
その他一般民事、刑事事件、少年事件に取り組む。講演実績は多数あり、地域経済を安定させる、地域社会をより良くしていくことに繋がる。
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